【選手紹介】奇跡の優勝を支えた縁の下の力持ち:ベン・ウォーレス(1/3)
絶対的な守備力を誇ったアンダードッグチームの守護神
2004年に奇跡的な優勝を果たしたデトロイト・ピストンズのゴール下の守護神として圧倒的な守備力を見せつけていたベン・ウォーレス。彼はドラフト外からNBAまで這い上がり、最終的には4度の最優秀守備選手賞受賞、4度のオールスター選出、2度のリバウンド王と1度のブロック王に輝くといった素晴らしい実績を残しました。彼の素晴らしいキャリアまでの道筋には長い物語がありますが、今回はその序盤について紹介していきます。
屈辱的なドラフト~才能の片鱗
アラバマ州に生まれたベンはクリーブランドの小さな大学で2年間プレーしていましたが、そこで彼は17.0リバウンドと6.9ブロックを平均するほどの選手となりました。そしてそのディフェンス力とポテンシャルに目を付けたヴァージニア大学に引き抜かれたベンはそこで初めて高いレベルの大学バスケに触れることになりました。ディビジョン2の大学バスケは彼が今までプレーしていたようなレベルとは大きくかけ離れており、順応するのに苦戦しましたが、彼は13.4得点10.0リバウンドを平均するほどの選手に成長し、チームの重要なメンバーとして貢献していました。大学4年時にはディビジョン2のオールアメリカン1stチームに選出され、NBAにドラフトされる可能性も高くなっていると言われていました。そして確かな自信をもってエントリーしたNBAドラフトでは指名されることはなく、屈辱的な経験をした彼はイタリアに渡り、そこでプレーをしていました。
イタリアでプレーしていたベンの高いディフェンス力とリバウンド力に目を付けたワシントン・ブレッツが彼をピックアップしました。しかし彼の1年目のシーズンはそうそううまくいくことはなく、このシーズンの彼の平均プレータイムはわずか5.8分であり、ベンは34試合しか出場することができませんでした。しかし少しずつでありながら確実に成長を続けていたベンの努力は2年目シーズンから現れ始め、1997~1998シーズンに彼は67試合に出場しそのうち16試合にスタメンとして出場しました。
そしてブレッツでの最後の年となった3年目シーズン、短縮シーズンとなったシーズンで彼は46試合に出場し16試合ではスターターとしてプレーし、26.8分の出場で平均6.0得点8.3リバウンド2.0ブロックを記録し、ディフェンス面である程度のインパクトを残していました。しかしウェバーを失って以来プレイオフに出場することができなくなっていたチームは成長を続けていたベンをマジックへトレードし、アイザック・オースティンを獲得しました。
そして1999~2000シーズンにマジックへ移籍したベンはそこでスターターとして定着するようになり、81試合に出場しました。スターターとしてプレーしていた割には平均24.2分の出場と短い時間しかプレーすることができなかったベンですが、4.8得点8.2リバウンド1.6ブロックと確実なディフェンス面での貢献性を見せていた彼でしたが、プレイオフ進出を逃したチームはまたしてもベンをグラント・ヒルとのトレードで勝利を目指し、このトレードでベンはキャリアの転換点となるピストンズに移籍することになりました。
運命のチームへの移籍~ディフェンダーとしての成長
ヒルとのトレードに巻き込まれピストンズに移籍したベンでしたが、ここで彼の才能は開花しました。1年目の2000~2001シーズンには平均6.4得点13.2リバウンド2.3ブロック1.3スティールとディフェンス面でさらに大きく成長し、チームをゴール下の守備で支えることができていましたが、チームは30勝52敗と大きく負け越してプレーオフに出場することはできませんでした。
翌シーズンの2001~2002シーズン、ベンは平均7.6得点13.0リバウンド1.7スティール3.5ブロックを記録し、オフェンスではなくディフェンスでゲームの流れを作ることができる数少ない選手として活躍していました。彼のディフェンス力はチームを大きく躍進させることにもつながっており、このシーズンのピストンズは50勝32敗の成績でプレーオフに出場し、1回戦を突破しましたが、2回戦でセルティックスの前に敗れました。ベンのディフェンス力はリーグの中でのトップクラスのものであり、このシーズン終了後に彼は206㎝のCながら初めての最優秀守備選手賞を受賞しました。また、オールディフェンシブ1stチームとオールNBA3rdチームにも選出され、オフェンス面で大きなインパクトを残せないながらもスーパースターの仲間入りを果たしました。
初めての最優秀守備選手に輝くことができた次のシーズン、ベンは平均6.9得点15.4リバウンド1.4スティール3.2ブロックを記録し2年連続で最優秀守備選手に輝きました。オールディフェンシブ1stチームとオールNBA2ndチームに選出され、リーグ2番目のCとして認められました。チームにはベン以外にもスター選手のチャンシー・ビラップスとリチャード・ハミルトンを獲得し、確実にオフェンス面でも順調に補強を進めていました。前年と同じく50勝32敗を残してプレーオフに出場したピストンズは1回戦でマジックを4勝3敗で、2回戦でシクサーズを4勝2敗で破りカンファレンス・ファイナルに進出しました。しかしながらネッツとのカンファレンス・ファイナルでは、ネッツのインサイドに対抗できるPFの欠落によってスウィープで敗れピストンズの躍進劇はストップしました。
まとめ
いかがだったでしょうか。ベンはCとしては低めの身長と決して高くない得点力というNBAで活躍するための基本的な能力や体格を持ってはいなかった選手でしたが、ピストンズでディフェンス能力を開花させてスター選手に成りあがりました。彼のハッスル精神はアスリートでない人でも参考にすべきものであり、次の記事で紹介するキャリア中盤では彼のその姿勢が実を結びついにNBA選手としての最高の栄冠をつかむことができました。
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